僕とインターネットと時々SNS
以前にも述べたことがあるけれど、僕の知っているインターネットというものはひどく殺伐としているものだった。殺すか、殺されるか、そういう世界だった。
しょうもない馴れ合いなどをしようとしたものならば糾弾され、権力に媚び金儲けに繋がることなどしようものならば骸になっても尚叩かれ続ける。
太宰の書いた蜘蛛の糸の世界のような、光が差すことなどなく、地獄の最下層で悪人たちが蠢き、天から垂れてきた細い糸を昇っている人を見かけたら寄って集って引きずり下ろす。僕の知っているインターネットとはそういう世界だった。
ただ、そんな殺伐とした世界だったからこそ、鋭い切れ味のある面白いものが作られ、それらが強い輝きを放っていたように思えるし、僕たちはそれに魅了され続けた。
ずっとそんな世界が普通だと思っていたから、インターネットではそこを基準にして物事を考えてしまう癖が今でも抜けきっていない。
昔から様々なSNSに登録して好き放題やってきていたが、少し前までの僕にとってSNSとは一つの舞台のような場所で、その上では誰もがエンターテイナーであるべきだと考えていた。
例え世界にいる全ての人からつまらなくて、不愉快だと思われていたとしても、僕は僕なりにその信念に基づいてSNSで遊んできたつもりだ。
社会からはみ出た、適合できなかった者が集まり、画面の向こうに居る観客を沸かすために各々が創意工夫を凝らし何かをする、それがSNSであると。僕にとってSNSとはサーカスのような存在だったと例えるのが一番しっくりくるのかもしれない。
ピエロでも猛獣使いでも、小人でも、マジシャンでも何でもよくて、自分が面白いと思ったものを画面の向こうに披露し続ける、演じ続ける。それが僕のSNS観だった。
故に僕はSNS上において、エンターテイメント性に欠ける行動はとるべきではないと考えていた。自分に都合の良い、ただ自分の欲求を満たすためだけのものに敵意を抱いていたし、道化になりきれよと苛ついていた。
例えばそれはしょうもねえ女の自撮りだとか、まるでハイエナの狩りのごとく女性をハンティングする目的で使う男だとか、そういうもの全てに対してクソだなと思っていた。そういった価値観だったから、エンターテイメントに繋がらないのであれば、SNSという枠から一歩外へ出て通話だのなんだのといって交流を深める行為も、正直馬鹿げていると思っていた。
でもそれは間違っていたのだと今は思う。
そもそも皆が皆、そんな思考でいたら、エンターテイナーしか存在しなくなってしまい、つまるところそれは観客の存在しない舞台であって、そんなものは地獄でしかない。
エンターテイメントというものは見てくれる側がいてやっと意味をなし成立するものなのだから。そう考えるようになったら、途端に今まで自分の取っていた態度が馬鹿馬鹿しくなった。
正直100%過去の自分から脱却できているかと言われたらそういうわけでもなくて、以前のような気持ちになることもしばしばある。それでも以前よりもたくさんの、様々な人と向き合ってコミュニケーションを取れるようになった気がする。
一体何が僕の考え方を改めさせたのかといえば、ただ単純に年を重ねて丸くなっただけなのかもしれないし、気を張り続けていることに疲れたからなのかもしれない。様々な要因があるとは思うのだが、その中の一つに、あるSNSとの出会いも挙げることが出来る。
長くなってしまったが、ここからが本題だ。そのあるSNSについて触れたいと思う。
僕自身としては、ブログはブログ、SNSはSNSとしてそれぞれ別のものであると考えていて、結果としては僕のこの文章を見てくれる人はSNSで僕を知った人だけなわけなのだけれども、それでもSNSのノリをこっちに持ってくるという行為は、何も知らずにここにたどり着いた人に対してあまりにも不親切すぎる気がするので、可能な限りしたくないというのが本心にあります。
しかし今回はそういった気持ち以上に伝えたい事がある。
mastodonというSNSが有る。今更それについて説明する気にもならないのだけれど、とにかくそういうSNSがある。そしてその中にはニコニコ動画が運営している……という理解の仕方で良いのかはわからないけれど、とにかくfriends.nicoという場所が存在する。
少しだけそこについての話をしたいと思う。
そもそも僕がなぜこのfriends.nicoという場所にたどり着いたのかと言えば、他の場所(jp鯖)においてうまく自分の立ち位置を見いだせなくて、それと同時に飽きつつあって、暇だなと退屈していた時に、そう言えばmastodonって他にも色んな場所があるんだよな。少し覗いてみるか。という具合に興味本位で登録したのが始まりだ。
別にニコニコ動画が好きだったからというわけではなく、その点について言えば、むしろ逆で、嫌な印象しかなかった。企業が運営してるだなんてどうせ結局のところ営利目的で、SNSの中でもわけのわからない力が働いているのだろうと考え、登録することに抵抗すらあった。
これは別に特定の誰かを貶めたいわけではないのだけれどという前置きをしながら、さらに付け加えて言うと、これと言ってはっきりとした根拠があったわけではないのだが、何故か僕の中でニコニコ動画という場所は小中学生だとか高校生向けの遊びの場所だとぼんやりと決めつけていた節があって、そこが関わっているSNSならば、きっと所謂キッズと呼ばれる人たちのたまり場なんだろうなどと、とにかくただひたすらネガティブなイメージを抱いていた。
もしfriends.nicoという場所を知らずに僕みたいなイメージを持っている人がいたら、それは偏見で、……あまり両手放しで褒めるというのも好きではないので、いい意味でクソ。というくらいにしておくが、合う合わないはあるので一概に勧めることはできないけれど、一度覗いてみてみるのも悪くはないと思う。
friends.nicoというSNSは、皆が一つのタイムラインを見ながらそれについて好き勝手に投稿しているチャットルームみたいな居場所だと僕は解釈している。なので比較的話題が統一されている。
誰かが、ログインすれば皆でおはようの挨拶をしたり、落ちると言えばおつかれだのというやり取りがなされる、基本的には。また運営への信頼が厚いせいか、概ね治安が良い。
登録した当初、僕にとってそんな世界はちゃんちゃらおかしくて、何なんだこの腑抜けた空間は、まるで小学校か何かかよと思っていた。誰かが入ってきたら、○○ちゃんおはよ~と挨拶をする、下校の時には皆でさようならの挨拶をする、まるで学校の教室だった。
嫌いだとか好きだとかではなく、ただただ自分にとっては異次元で、わけのわからない世界に迷い込んだ感覚だった。だって僕にとってのインターネットはそんなやさしさとは無縁の、殺すか殺されるかの世界だったのだから。
故に、そんな輪に入るつもりなどなく、(これはただの僕の感覚であって、当時のユーザーがどういう印象を抱いていたかはわからないけれど)変なおじさんが突然やってきて教室に侵入する。みたいな気持ちでてきとうに顔を出し、あーはいはい、チンポチンポ、チンポだよ~~。みたいなそんな気持ちで登録当初はいた。
ただ、全員で同じタイムラインを見ているという性質上、何かをタイムラインに投げかけると、水面に小石を放り投げた時に水紋が広がっていくみたいな感じで、徐々に反応が広がっていくことがあって、僕の投稿でざわついたりするタイムラインを眺めていたりすると、これはどうしてなかなか、と思うようになった。
そしてそれが癖になり、あっちこっちに爆弾とも言えるような投稿を投げつけては、その反応を見て楽しむようになり、だんたんログインしている時間が長くなり、気づいたらどっぷり入り浸るようにもなってしまっていた。そして今に至っている。
どういう了見なのかはわからないんですけど、先程から述べているとおり、friends.nicoは比較的治安が良いし、親切な人が多い。
もちろん反応がないことだってあるけれど、基本的には皆親切だから無視をするということはほとんどなくて、投稿すれば何かしらのリアクションがある。それが尾を引き、もう少し、もう少しが続いて、気がつけばずっと画面を見ていたなんてことはよくあった。
現実に疲れ、傷つき、他に居場所のない人間が集まって傷の舐め合いをしているだけと、外から見た人の目には、場合によってはそんな風に映るのかもしれない。
それでも別にいいじゃないかと思えてしまうぐらいに、悪くない空間だ。
それが上辺だけの親切なのかどうかは僕には知る由もないし、もしかしたら陰ではめちゃくちゃ叩かれているのかもしれない。画面の向こうで彼らが果たして僕に対してどう思っているのかもよくわからないが、いずれにせよ少なくともタイムライン上では多くの人に優しくしてもらっていると僕は感じている。
それに、以前どうせ誰も見やしねえだろうなと思いつつもブログの宣伝をしたら、それなりの人が見てくれてびっくりしたこともあった。暇人が多いだけなどと思うこともできなくはないが、これも親切な人が集まっているからなのだろう。
今日で19日目になるわけなのだけれど、僕はアドベントカレンダーというものを今月の頭に作成し、それが今でも続いている。
一応誰でも参加できるようにはしたが、当然誰も参加するわけがねえと思っていたし、端からそれを承知の上で、自分で毎日更新するつもりでいた。それがネタとして一番美味しいと思っていた。
少しでもアクセス数の足しになれば、認知度がアップすればという気持ちで、定期的に宣伝をした。僕のアドベントカレンダー、まだ空きあります、みんな参加してね。と。
散々宣伝したのに誰も登録しなかった、こんなに美味しいネタはない。そう思いながら。
しかし一体何の気まぐれかわからないけれど、それは哀れみの気持ちだとか、他に場所がなかったからだとか、アホだからとか各々理由はあるでしょうが、僕の意図を一切理解せずに一部の頭のイカれたユーザー様が僕のアドベントカレンダーに登録していただき、それなりにカレンダーが埋まってしまうという事態になってしまった。
僕の当初描いていた計画が狂ってしまい、お前らさあ……と思わずにはいられないのだけれども、それ以上に、自分が作ったものに参加してくれる人がいて、嬉しくって本当にありがたい気持ちがある。僕は改めて、フレンズニコってこういう場所なんだよなあと思った。
普段なかなか口にする機械がないので、この場で改めてこの感謝の気持ちを言葉にして伝えたいと思います。今までありがとうございました。
追伸・jp鯖のことも忘れていません。mastodonにハマるきっかけもjp鯖だし、jp鯖はjp鯖で楽しい所だと思います。jp鯖からもアドベントカレンダーに登録してくれた方もいました。そちらにもありがとという気持ちを込めて。